婚前契約書作成のすすめ
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「婚前契約」という言葉をご存知ですか?
昨今、ニュースやSNSで「婚前契約」という言葉を目にしたり耳にしたりする機会が増えました。
「婚前契約」とは、一般に、結婚前のカップルが結婚後に関する様々な事柄について取り決める契約のことをいいます。
お金のこと、住まいのこと、仕事のこと、将来のこと… 結婚したあとに決めなければいけないことは多岐にわたります。
最近では、契約結婚を題材としたドラマの影響や、女優や歌手の方などが婚前契約書を交わしたことがニュースとなり、日本でも「婚前契約」という言葉が少しずつ浸透してきています。
とはいえ、まだまだ日本ではあまり一般的でなく、もしかすると「契約」という言葉だけでも、なんだか堅苦しく、あまり良いイメージが持てないという方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、もともと他人同士が結婚して共同生活をしていくわけですから、衝突が起きないほうが不思議なことと思っても過言ではありません。
育ってきた環境や価値観も違う二人の考え方やビジョンを予め話し合い取り決めしておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。
また、お互いの考え方を知ることができるのも婚前契約を作成することのメリットといえるかもしれません。
結婚についても例外ではなく、パートナーとの間での約束ですから、結婚生活の終わりの一つである離婚のことを取り決めしておくことは自然なことです。以前と比べ、婚前契約をする方が増えてきているという社会的事象も、婚前契約がおかしいことではないと考えている人が増えていることの現れといえるかもしれません。契約書を作成することが一般的である企業間取引でも、契約の解除に関する条項や契約期間満了に関する話はどの契約書にも記載されています。
婚前契約書を作成するメリットは?
婚前契約を締結したことを証する書面として「婚前契約書」を用意するメリットは、意外と大きいです。
- 結婚前にお互いの価値観を事前にすり合わせることができる
- 日常生活ではなかなか聞きづらい・話しづらいことも、事前に話合う機会ができる
- 結婚生活における万が一のトラブルに備えることができる
- 「万が一」が起こった際にも、契約に従って円滑なトラブル処理が可能
つまり、結婚生活に関する余計なストレスを抱えることを防ぎ、より円滑な結婚生活の後押しとなる可能性の高い契約書なのです。
なぜ離婚は大変なのか
結婚生活を始めるにあたって気になるお金のこと、生活のこと…「価値観の相違」や「金銭トラブル」「離婚に関するトラブル」等の問題は、思った以上に精神的なダメージを受けるものです。
例えば、一般的に「結婚するより、離婚の方が大変」等と耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。それは、日々多くの男女間トラブルに介入している私達弁護士も痛感するところです。
では、なぜ離婚は大変なのでしょうか?
それは、事前の取り決めが無い、つまり、「お二人の問題を解決するためのガイドラインとなる約束事が存在しない」ため、一から道筋を立てていかねばならないからです。
しかも、トラブルとなっている段階では、お互い感情的になり冷静に話を進めることは難しいという事情も影響します。そのため、離婚成立までの道のりは長くなり、お子様や家族等、周囲への影響も考えなければならず、結果的にお二人が精神的に疲弊してしまい、大変と言われております。
婚前契約は法律で規定されている契約でしょうか?
婚姻に関する規定が定められている「民法」では、「婚前契約」という表現は用いられておりません。
一般に、「婚前契約」と呼ばれる契約については、「夫婦財産契約」(民法755条)という名称で規定があります。
※ 「夫婦財産契約」とは、婚姻しようとする者が、婚姻の届出前に、締結する契約で、婚姻後の財産や離婚時の財産分与などのことを予め取り決めしておくものです。婚姻の届出前に行うことがポイントです。この夫婦財産契約のことを、世間では「婚前契約」と呼ぶことも多いです。
※ 参考までに、婚姻後に行った夫婦間の契約は婚姻中であればいつでも取り消すことができてしまうことに注意が必要です(民法754条)。
婚前契約をするとどうなるの?
婚前契約を結ぶと、法的効力が生じます。ただし、この「法的効力」の意味が重要になります。
「法的な効力」という言葉は、いわゆる「有効」か「無効」かという意味で用いられるのが通常です。この場合の法的な効力は、当事者がその契約の拘束力を受けるか否か。という意味が普通です。
問題は、拘束力があるとして、それを一方が破った場合に、契約違反を理由に裁判を通じて、その契約内容を実現するよう求めることができる効力までも有するのか、否かが重要になります。具体的には、執行力まで認められるのかどうかということになります。
具体例
100万円をある方に貸して、返還の約束もして、それを書面にしました(契約書)。
これに反し、借主が100万円を返済しなかった場合、貸した人は、裁判所に金銭返還請求を起こすことができます。この訴えが認められ、それでも100万円の返済がされない場合、貸主は、裁判所に強制執行を申立てて、借主の財産を差し押さえるなどして100万円の返還を実現していくことができます。
しかし、たとえば、契約で夜9時までには帰宅することと取り決めし、仮にそれに違反した場合、違反された側は、夜9時までに帰宅するよう実現を裁判所に訴えて強制的に実現することは困難です。
このように契約書の効力を論じるには、その内容ごとに、拘束力があるのか、強制執行することができるのか、など一つ一つ吟味していく必要があるのです。
また、夫婦財産契約は基本的に自由にその内容を協議で定めることができますが、夫婦の公平を著しく害するような内容のもの例えば妻の特有財産の管理する権限・処分する権限はすべて夫に帰属するという合意は公序良俗に違反し無効となる可能性が高いので、注意が必要です。その他強行法規に違反する内容も無効となります。
このあたりについては、専門的な話になりますので、法律の専門家である弁護士に相談し、確認するとよいでしょう。
婚前契約の方法は?
婚前契約は、婚姻する前に、契約書として書面化するのがよいでしょう。口頭では後に言った言わないになりますし、記憶も薄れていきます。この点、書面の形にして見える化しておけば、その心配もなくなるでしょう。
登記しなければならないのでしょうか?
夫婦財産契約については、婚姻の届出までに「登記」しなければならない(民法756条)とされています。ですが、必ずしも登記しなければ効力が発生しないわけではありません。この登記はあくまで当事者以外の第三者や当事者の一方が死亡した場合などその相続人などに夫婦財産契約の内容を主張するために必要になるものであって、当事者間で効力を発生させるためには必ずしも必要とはなりません。このあたりも法律の専門化である弁護士にご相談することをお勧めします。
公正証書にしなければならないのでしょうか?
必ずしもそういうわけではありません。しかし、上記のとおり、法的な効力という意味において一つ一つの条項を吟味していく必要がありますし、契約書の紛失などに備えるべく公正証書にすべきです。
弁護士にできること
「離婚」の問題には発展しなくとも、結婚を予定しているお二人のルールを婚前契約や夫婦財産契約といった形で事前に取り決めておくことで、トラブルの解決方法が整理・明確化されるため、余計なほつれを生み出すことなく、お二人の仲を取り持つ役割を果たします。
このように、「婚前契約書を作る」ことは、結婚生活の日常の幸せづくりにも繋がっていくといえます。
- 家事の分担など、生活に関する約束をして、安心して結婚生活を送りたい方
- 結婚にあたって、お互いの価値観を話し合って書面に残したい方
- 万が一、相手が浮気した場合のために、予め慰謝料額を取り決めておきたい方
- 離婚になった場合に揉めないよう、財産分与に関する約束事を決めておきたい方
- お互いの資産やこれからの生活費など、二人のお金について明確に取り決めたい方
「婚前契約書を作成する」という選択はいかがでしょうか?
婚前契約書の作成は弁護士にお任せください
せっかくの「契約書」ですから、法的な知識を持つ弁護士に依頼し、万全に備えることをオススメします。弁護士は、お二人の「幸せ」や「備え」作りを、法的な視点を以て文章化し、サポート致します。その他、細かな取り決め等も、ご希望に沿って、婚前契約・離婚に詳しい弁護士がご相談に応じます。
費用が心配という方も、どうぞお気軽にお問い合わせください。財産の種類や条項数・文字数に応じて弁護士費用の見積もりのご提示も可能です。なお、参考金額は、基本料金11万円~(税込み)です。