財産分与(分類別)
現金・預貯金の財産分与
現金や預貯金の財産分与については、分与割合が決まっていればその額を相手に渡すだけです。結婚後に貯えた分だけが財産分与の対象となります。しかし、お互いが財産についてきちんと情報開示しない場合が多く、トラブルとなることがあります。
実際の離婚協議では、夫婦双方がそれぞれの財産に関する情報を開示します。預貯金通帳を開示したり、保険の解約返戻金の証明書を開示したり、住宅ローンの返済表を開示したりします。
財産を受け取る側は、情報の開示を求め、財産を渡す側は情報を隠したがります。その中で双方が疑心暗鬼に陥り、情報の開示がスムーズに進まないことがあります。
銀行などの金融機関に夫や妻の預金状況の開示を求めても、基本的に銀行側は個人情報として回答を拒否することが多いため、教えてもらうことはできません。
弁護士が、弁護士会を通じて調査を行ったとしても、回答を拒否する金融機関がほとんどです。
そこで、訴訟や審判など裁判所での手続を行っている場合、「調査嘱託」という方法により、預貯金口座の開示をしてもらうことができます。個人の代わりに裁判所が、審理に必要と判断すれば、金融機関に対し取引履歴などを開示するように求めます。実際の離婚協議では、相手が信用できる場合は稀なので、相手方が「これがすべての財産です」と言って開示した情報で満足することは少なく、夫婦双方がそれぞれ情報開示を求める場合が多いです。
株・国債などの有価証券の財産分与
株や国債などの有価証券も、財産分与の対象になり得ます。
有価証券に関しては、結婚後に購入したもののみ、財産分与の対象となります。有価証券は、時期によって評価額が変動する為、通常は離婚成立時の評価額を目安にします。
しかし、離婚前に別居をしていた場合は、別居が始まった時点での評価額を目安に分与を決める場合もあります。分与方法は、現物のまま有価証券として分与する方法や、現金に換えて分与する方法が一般的です。
退職金の財産分与
退職金の財産分与については、すでに退職金を受け取っている場合と、将来給付予定の(離婚の時点でまだ支払われていない)退職金を分けて考える必要があります。
まず、既に退職金を受け取っている場合は、その受け取った退職金が財産分与の対象となります。ただし、結婚前の勤務期間分に対応する金額は対象から除外されます。
問題は、離婚の時点で退職金がまだ支払われていない場合に、財産分与の対象となるかどうかです。退職まで期間がある場合には、夫が会社を解雇されたり、会社が倒産したりする可能性があり、退職金が支払われるかどうか不確実な状態になります。裁判では、退職金に対する寄与度や、退職金をもらえる確実性などを要素として、判断が下されます。
最近の実務では、別居時に自己都合で退職した場合の退職金相当額を考慮することが多いようです。また、定年退職時の退職金から、別居後の労働分を差し引き、中間利息を控除して口頭弁論終結時の価額を算定するという裁判例もあります。
動産の財産分与
自動車や家具などの動産の財産分与については、法律上は厳密に金銭的価値を評価して分けるのが理想とされていますが、実際は価値が少ない場合がほとんどのため、細かいところは夫婦間の交渉のもとでざっくり決められることが多いと言えます。
分与の対象となるのは、婚姻中に築いた財産です。それぞれの現在価値を評価して、その現在価値を寄与度に応じて分与することになります。夫婦のいずれかが独身時代から所持していたものはその人の特有財産となり、分与の対象とはなりません。
動産の現在価値の評価方法については、基本的には、中古市場での評価額を参考に、価値を算出していきます。
自動車であれば、中古車の価格相場を参考に考えていき、家具や電化製品などの財産も、極力中古の市場価格を参考に価値を算出していきます。ただし、古くなった家具や電化製品は、売れたとしてもよい値段になることがありません。そういった性質もあり、最初にも述べた通り実際の協議では厳格な価値換算をすることは稀です。実際には夫婦間での話し合いの上、現物で分け合うことが多いです。
動産に関する評価や協議を離婚協議書に記載することも稀であり、一般的には夫婦間での合意に委ねることが多いです。